それから

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違う種類の涙

祖父の葬儀が終わってすぐのある夜、お酒の弱い父が、珍しく一人で酔っ払って饒舌になっていた。
「わきゃきゃきゃきゃ〜、お母さん愛してる〜」とわけわからんことを赤ら顔で叫んでいた、馬面の父。
祖父が亡くなってすぐにも関わらず、ぶぶぶっと笑ってしまった。だって馬面の赤ら顔なんだもん。

私は両親が喧嘩しているところをほとんど見たことがない。
ついでに言うなら、両親がそれぞれの悪口を言っているところや、赤の他人の悪口を言っているところも見たことがない。
お人好し極まりない夫婦。
馬面とたぬき顔の夫婦。これ関係ない。

成人する前は何度も衝突したけれど、今では私は両親のことが大好きだ。
昔は「尊敬できる人は?」という質問に対して「釈迦です」なんて答えていたけれど、今では「両親です」と言うことが出来る。

父は言う。「お母さんの、世間知らずだけど、ピュアなところが好きなんだ」
母は言う。「お父さんの、変わり者だけど、何でも一生懸命なところが好きなの」
それを聞いて、笑いながら「馬鹿じゃないの」という私と姉。
ちなみに私と姉は特に動物には似ていない。これも関係ない。ちょっと照れくさいから、ちょいちょいこんな言葉をはさまずにはいられない。

赤ら顔の父は、酔っ払いながら私に言った。
「中学生の時、お前が不登校になっただろう? どうしても学校に行けなくて。いろいろ策は試したけど、どうしてもダメだった。もうこのままこの子は学校に行けないのかなあ、って思ったんだ。その時ね、俺は決めたんだよ。『俺が一生この子を守る』って。決めたよね。うん」
馬面の赤ら顔のおっさんは、最後に納得したように「うん」と言った。
祖父が亡くなった時とは違う種類の涙を、流しそうになった。笑いながらだけど。