体調を崩して入院していた。マイコプラズマ肺炎らしい。らしい、というのは、なんか知らんが病院が精密検査をケチってしてくれなかったから。それでいいのか?と思うが抗生物質で熱が下がったのでいいらしい。30代後半は医療現場では「若い人」という部類に入るので随所で「ほっとけば治る」が適用されている気配がバンバンした。日常生活では「若い」と言われることがほとんどなくなったが、違う世界にいけば自分はまだ若いのだ。
入院中、私以外の患者さんはおそらくほとんどが後期高齢者。明らかに私が一番若かった。介助なしでトイレに行けるのは私くらいだった。周りの人たちはいったい何の病気で入院しているのかわからないけれど、夜中に高熱で呻いているのは私くらいだった。介助なしでトイレにはいけるが夜中に一番苦しんでいるのは私、という不思議な図である。
四人部屋に入院していたのだけど、その中の二人は痴呆が入っていて、私のことを看護師さんと勘違いしていた。私がトイレに行くためにベッドから出ると向かいのベッドのおばあちゃんが「すみません!水飲ませてください!」と懇願するので参った。ごめんよ、私は何もできないのよ……。
高熱が一週間も続いたのだけれど人間とはおかしなもので熱でうなされている時ほど看護師さんへの観察眼が鋭くなった。毎日入れ替わり立ち代わり色んな看護師さんがお世話をしてくれるのだけれど、具合が悪い時ほど仕事ができる看護師さんとできない看護師さんの違いが鮮明になって頭の中で分析が捗った。特に分析して勉強になったのは、できる看護師さんはきちんと数字で説明してくれる、ということだ。私の場合、高熱とそれに伴う頭痛でとても寝れたものではなかったので定期的に解熱剤兼痛み止めを点滴してもらっていたのだが、最初のうち、その使用限度(1日3回)と使用間隔(一回使用したら4~6時間は空けなければいけない)がわからずに痛くなったらナースコールしてしまっていた。途中で優秀な看護師さんが説明してくれたのでその後はそれに沿ってある程度の我慢ができたけれども、できない看護師さんはこういうことを何も教えてくれない。曖昧に、「もう少し間隔空けた方がいいですね~」というだけだ。挙句の果てに私が夜中に痛みに耐えかねて解熱剤を頼むと、「(痛み止めを)使いすぎじゃないですか?」といううんざりした感じで言う始末。さすがになんやこいつ、と思ったけど大人の対応で乗り切った。体調が悪いのが一層悪くなりそうだった。
だけど、こういうことは自分の仕事にも応用できるなと思った。自分が部下に指示する時、極力数字で示してあげること。それだけでその後の不安が払拭されるのは間違いない。さっそく仕事復帰したら心がけてみよう。入院中もこんなことを考えている私は相当な仕事人間だなと思いつつ、どんなことにも学びを見出す自分が結構好きだったりするのであった。