それから

ちょいと読んでかない?

令和のはじまりに寄せて

長い休みは嫌いだ。普段から外出が好きで、活動的な人にとっては嬉しいのかもしれないが、抑うつ気味で、ここのところ休日になると寝たきりになってしまう自分にとっては、起き上がれない自分の体と心を仕事という強制イベントで紛らわすこともできず自己嫌悪だけが降り積もっていく辛い期間だ。だったら無理矢理にでもどこかに出かければ良いじゃないかと健康な人間は言うかもしれないが、話はそんな単純なものではない。そんなことが出来てたらそもそも寝たきりなんかにゃなっていない。ふん。


そんな風に鬱々とした気分で長い休みを過ごしている最中、平成という時代が終わった。
誰もが知っている通り、元号というのは日本国特有の制度だ。昔はアジアのいくつかの国でも元号が使われていたらしいけれど、今も使用されているのは日本だけらしい。
この元号、別になくてもいいんじゃね? という意見もある中、私はけっこう好きだったりする。なんとなく、仏教の輪廻転生だったり、自然災害が多くてすべてが壊れたり流されたりしてもまた新たに始めましょうっていう日本人の思想が込められているかのような気がするからだ。新しい名前で、新しい時代を始める。国民全員でそれが出来るのって、なかなかすごいことだ。


退位した上皇陛下と上皇后陛下(美智子さま)のことは話したことはおろか会ったこともお目にかかったこともないけれど、見ているとなんだか心が温かくなって、ああ、自分って日本人なんだなあという気分になるお二人だった。
史上初めて「象徴」としての天皇という役目を背負い、模索し、果たしたお二人でもある。その重責と難しさたるや平民の自分にとっては想像が追いつかない。そして崩御ではなく生前退位という選択で息子に天皇の地位を継承したことはあえて言葉を選ばずに言わせてもらうならば実に今っぽい選択で大好きだ。


別に特別な愛国心も何も持っちゃいないけれど。
なんならこんな国嫌いだと思うことも多い。ただ平和なだけでーーそれが本当はいちばん尊いとわかっていてもーーとても生きづらい。
外国で暮らしたことがないからこの国以外の生きやすさのことなど知らないけれど、少なくとも私という人間にとっては定期的に抗うつ薬の投薬が必要なくらいにはこの国は生きづらいみたいだ。


だから、雅子さまという人が皇后になったのは自分にとってはけっこう大きな出来ごとなんだよな。
天皇雅子さま(と愛子さま)が心から笑っていれば別にあとはわりとどうでも良いです、私は。
逆にいうと、それが実現できないと、日本っていよいよ自分にとって生きづらい国だって証明されちゃいそうでちょっと、怖い。


誰も死なず。誰も傷つかず。
それが無理ならせめてそれを願うだけ。
令和は平和がいつまでも続いて、この世は生きづらいと思っている人が一人でも減ればいい。

自分より年下のミュージシャンの音楽を聴くということ

つい最近、職場で同僚と最近聴いている音楽の話をした。偶然にも、お互い聴いていたのがわりと若いアーティストだった。最近の若い人、良いよね。そんな風に言い合っていると、同僚がこう呟いた。

「自分より若いミュージシャンの音楽聴くのに抵抗があったけど、それを抜けた気がする」

嗚呼、自分と同じことを思ってる人がいたんだ、とちょっとびっくりした。
同僚も自分も30代の前半なのだけど、たぶん、いやきっと、その年齢は『自分より若いミュージシャンの音楽を聴くのに抵抗がある』のに多いに関係していると思う。

自分で音楽を本格的に聴き始める10代後半から、ある程度自分の好みが確立してくる20代半ばまでの期間、リアルタイムで勢いよく活躍している音楽の作り手は自分より年上か、もしくは同年代のことが多い。
自分より人生経験の豊富な年上の作る音楽は素直にリスペクトできるし、同年代の活躍は少しの嫉妬を感じつつも刺激になる。

だが、20代後半になると、作り手の年齢と自分の年齢が逆転してくる。活躍しているミュージシャンに年下が増えてくる。20代前半で700万枚売れるアルバムを作って1億円の家を両親にプレゼントしているテイラー・スウィフトみたいな化け物は置いておくとしても、国内外問わずヒットチャートを賑わすミュージシャンの生年月日を見て驚くことが多くなってくる。

「この人も、年下なのか……!」

そしてその言葉の後はこう続く。

「この人(たち)はこんなにすごい音楽を生み出して世の中に認められているのに、自分は何も生み出していない……。自分は何者にもなれていない」

今考えると阿呆らしい思考なのだが、私にはそんな風に思う時期が確かにあった。自分には何か突出した才能があるに違いないという期待が、いよいよ本当に「ただの幻想」だったと突きつけられる時期。世界を変えることはできないんだと、悟る時期。
年下の売れているミュージシャンというのはそれを感じ取る象徴なのだ。ミュージシャンは、科学者や多くの政治家と違って、学歴や家柄が良くなくてもなれる=かつては自分と同じスタート地点に立っていたように見えることも、そういった感情を抱く原因かもしれない。

そうして私は自分より年下のミュージシャンを無意識に聴かなくなった。
ビートルズマイケル・ジャクソンなど、嫉妬なんて一ミリもしない神様たちの音楽を聴いていた。彼らの音楽は、今でも大好きだ。そこには普遍的な煌めきと本質があるから。

けれど、どこかでいつも思っていた。もっと新しいものはないのか? 約束された感動じゃなく、先の見えない危うさを楽しむような音楽はないのか?

そんな私の目の前に現れたもの。それはApple Musicだった。時は2015年。
私の音楽ライフに革命が起こる。いや、大げさじゃなく。月額980円で無数の音楽に出会える素晴らしさ。ベッドに寝っ転がって新しい曲をすぐに聴くことが出来る音楽のどこでもドア。その頃から私は、自然と自分より年下のミュージシャンの音楽を聴き始める。

そして、二つのバンドとの出会いが私の落胆を吹き飛ばすことになる。

その一つはイギリスのバンド、Catfish and the Bottleman。

Catfish and the Bottlemen - Cocoon (Official Music Video)

そしてもう一つは、日本のOKAMOTO'S。

OKAMOTO'S 『90'S TOKYO BOYS』MUSIC VIDEO

彼らは自分よりも年下で、天才だけど、同じ今を生きている感じがした。こんなに素敵な音楽に出会えるのなら、もっと新しい音楽を聴きたい。それから私は年下のミュージシャンの音楽を聴くことに抵抗がなくなった。

それは自分を諦めたということなのだろうか? 自分が才能のある人間ではないと悟ったのだろうか?
いや、違う。上手く言語化できないけれど、そういうネガティブな感情じゃない。私はまだどこかで、自分は世界を変えられると思っている(ほんのかすかにだけど)。でも、その世界はひとつではなくて、何人もの人間の中にいろんな形で存在していて、色んな人が、色んな世界に影響を及ぼし合いながら生きているんだ。CatfishとOKAMOTO'Sに出逢って心の扉を開いてもらってから、そんな風に考えられるようになった。

これを読んでいるあなたにも、そんなミュージシャンはいただろうか?
それはいったいどんな音楽だったんだろうか? 聞いてみたいと思った。

自分より年下のミュージシャンの音楽を聴くということ。
それはこれからの人生でいちばん楽しみなことのひとつだ。

無理ゲーなんだよな。

ここのところ体調が悪い。
ここで言う「体調が悪い」というのは、体が鉛のように重くてだるくて何もする気が起きないことを指す。
まあ、はっきり言ってしまうと、うつ病の症状だ。うつ病というと、経験がない人は精神的な不調を思い浮かべるだろうけど、実は体にも多大な影響が出る。本当に調子が悪い日は朝ベッドから起き上がることができない。やる気とかそういう問題じゃなく、文字通り、本当に、起き上がれない。

そういう状態からの外出はかなりハードルが高い。まず、起き上がるのに体と心のエネルギーをほぼ使い果たす。起き上がれたとしても、そこから家を出るまでにはいくつものミッションをこなさなければいけない。
シャワーを浴びる(髪を洗う、身体を洗う、顔を洗う、身体を拭く)、下着を選ぶ、化粧水、乳液をつける、髪をドライヤーで乾かす、コンタクトレンズを入れる、服を選ぶ、服を着る、化粧をする(下地、ファンデーション、眉を描く、アイシャドウを塗る、まつげをビューラーであげる、マスカラを塗る、チークを塗る、リップを塗る)、髪の毛をワックスでセットする……。
こうして描き出して見るとものすごくミッションが多い。しかもこれを電車に乗る時間に合わせて逆算しながらこなしていかなくてはならない。
普通の人には苦もなくできることも、うつの状態ではこれのひとつひとつをこなすのにものすごいエネルギーを使う。
基本的に、工数が多い作業を行うのが困難になる。だから、これに加えて朝ごはんを作るなんてかなり調子が良い時でないとできない。
料理は工数が多い作業の代表格なので、うつ状態の人間にとって相当難しいミッションなのだ。
クリアできる気がしない。無理ゲー。超無理ゲー。

そういう無理ゲー感を恋人に説明しようとしたけど、理解してもらえない気がして、諦めた。
自分ができることをできない人がいるって、人間なかなか理解できないよね。私も、そうだ。

いつも、こういう時、ものすごく孤独を感じる。
たとえどんなに君が好きだよ、って言われても。
孤独って物理的に独りの状態じゃなくて、
理解してもらえないってことかもしれない。

わがままかもしれないけど、私が「体調悪い」って言った時は、
「家で何もしないで寝とけば」って答えてほしい。
ちょっとは調子良くなって、ミッションクリア出来る日もあるからさ、
その時まで、待っててくれないかな。