それから

ちょいと読んでかない?

白髪について

 20代の頃から、右側の前頭部に固まって白髪が生えてくる。左側の前頭部や後頭部にはなく、右側の前頭部、そこだけに密集して白髪が生えてくるのだ。白髪染めをしているので現状は白髪は前頭部だけにとどまっているが、染めなければ私の髪はディズニー映画の「アナと雪の女王」のアナのような感じになるだろう。ちなみに私にも姉がいる。ものすごい寒がりで冬は分厚い靴下を履かないと眠れないが。

 正直そんなに褒められた食生活をしているわけではないので栄養面も大いに影響していると思うけれど、それと併せて、ストレスもこの白髪を作り出している一因だと思う。長くうつ病を患っていることと無関係ではないはずだ。
 白髪に対して、私は煩わしさを感じていた。1ヶ月に1回は美容院に染めに行かなくてはならないし、少し伸びてきた時は白髪隠しのヘアマスカラでの応急処置が必要になる。白髪は徐々に増えている気もしており、自分の加齢を感じて落ち込むことも少なくない。ちなみにものすごい寒がりな姉の頭には白髪は数本しかない。なんとも言えない気持ちである。
 ただ昨日、日曜日の夜は少し心持ちが違った。
 夕方、久しぶりに作った摺下ろした人参入りのハンバーグがとても美味しかった。その後洗い物をてきぱきと済ませ、これまたてきぱきと風呂に入った。心も体もさっぱりとした。私は歯磨きも済ませた。あとはもう寝るだけだ。朝が来るまで好きなことをしていていい。この時間は私だけのもの。
 そして私はドライヤーで髪を乾かし始めた。相変わらず右側の前頭部には密集した白髪が存在していた。
 私はその時突然、
「これはこれでいいか」と、白髪を受け入れた。その瞬間、私はなぜかとても泣きたいような気持ちになった。実際に少し泣いた。
 何が作用してそのような心持ちになったのかはわからない。ハンバーグと早めの風呂。なんにせよこの組み合わせが私の中の自己肯定感のスイッチを押したのだ。人間の心理とはよくわからないものだ。

 * * *

 2011年、東日本大震災が起こった時、テレビのニュースで両親を津波で亡くしたという高校生が取材を受けていた。彼の頭には少なくはない白い髪が存在していた。両親を失ってから白髪ができたと話していた。今でもその姿が忘れられない。
 今、彼が元気で過ごしていることを切に願う。