それから

ちょいと読んでかない?

睡眠

 新宿に友人と映画を観にきた。観にきた、のだが、始まって20分も経たない内に奇妙な感覚が私を襲い、耐えられなくなって劇場を後にしてきてしまった。どういう感覚かというと、どこかに眠気があるのに目が勝手にかっと見開いてしまって閉じることができず、急に走り出したくなってしまうのだ。恐らく寝不足と、映画の鑑賞中に寝てしまうのを回避するため摂取したエナジードリンクのせいがあるかと思われる。それはある種の恐怖だった。いや、大げさではなく。
 そして今、映画を観続けている友人を待ちながら、劇場近くの喫茶店でこれを書いている。外では雨が降っている。時間の流れがとても遅い。映画は最近の映画の傾向に沿って2時間半の長尺である。こんな時こそブログを書くしかないじゃないか。ブログがあって良かった。スマートフォンひとつで文章が紡げる時代。万歳。

 自分では充分眠れているつもりでも、実はそうじゃなかったのかもしれない。うつ病で休職している身で、先の見えない将来への不安が膨らみ、無意識の内に私の睡眠を妨害していたのだろう。そういえばこの前、姉に口に掃除機を突っ込まれて吸われる夢を見た。そして自分のうなされる声で目覚めた。我ながらなかなかイカれた夢だ。

 ちなみに私は人と寝るというのも苦手だ。どんなに仲のいい友人だろうと、心を許している(つもり)の恋人だろうと、大切な家族でさえも、決まって大体先に寝るのは一緒に寝ている相手の方で、私は「何で先に寝ちゃうの」と思いながら、もやもやと眠れない夜を過ごすことが多かった。「もっと話をしたいのに、どうして寝ちゃうの?」ずっとそう思っていた気がする。
 それはもしかしたら、会話の分量の問題ではなくて、本当に言いたいことを言えていなかったのかもしれない。充分な会話の後には充分な睡眠が訪れるのかもしれない。

 友人が映画を観終えて喫茶店にやってきた。
「大丈夫? 映画の間、めっちゃ寝た」
 と友人は言った。この友人は本当に気が置けない。そう言えばこの友人と一緒に寝る時はいつも同時に眠りについていることに気づく。
 雨はもうじき止みそうだ。