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シンプルな悲しみーー「Slipped Away」アヴリル・ラヴィーン

音楽

アンダー・マイ・スキン
アヴリル・ラヴィーン
BMG JAPAN (2004-05-12)
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アヴリル・ラヴィーンのセカンド・アルバム「アンダー・マイ・スキン」に、「スリップト・アウェイ」という曲がある。
歌詞を読むと一見失恋の曲にも思えるが、アヴリルは、この曲を亡くなった最愛の祖父のことを思って書いたと言っていた。

The day you slipped away...
(あなたがそっと姿を消した日のこと)
Was the day i found
(あの日わかったの)
It, won't be the same
(もう同じままじゃないんだって)
Oh

私は先日祖父をなくした。
入院していた病院で突然の心肺停止だったから、その死に目に会えたのは家族の中に誰一人いない。

祖父が亡くなった日、父がおもむろに私たちに語り出した。
「今朝、親父の夢を見た」と。
その夢は、父と祖父がなだらかな傾斜の崖の端に二人で立っているというものだった。
父は祖父の手を握っていた。崖から落ちないようにと強い力で。
しかし、父の手の力は尽きてしまい、祖父はとうとう崖の下へ落ちて行ってしまった。
父が夢を見た直後、けたたましく家の電話が鳴り響いた。
病院からだった。祖父の容体が急変したとの知らせだった。
父が夢を見た時刻は、ちょうど病院にいる祖父の心臓が止まったのと同じくらいの時刻だった。

「Slipped Away(スリップト・アウェイ)」は「そっと離れる(姿を消す)」という意味だけれど、slipには「滑る」という意味もある。
私は父の夢の話を聞いたあと、この曲を思い出さずにはいられなかった。
祖父の手は、父の手を滑り落ちて行った。
父がもし祖父の手を握り締めたまま、崖のこちら側へ引き寄せることが出来ていたら、どうなっていただろうと思う。
でも、そんなことはあり得ないのだ。それは多分、決まっていたことなのだから。

I didn't get around to kiss you
(あなたの手に)
Goodbye on the hand
(さよならのキスをするチャンスもなかった)
I wish that I could see you again
(もう一度あなたに会えたらいいのに)
I know that I can't
(そんなことあり得ないってわかってるけど)

ごくごくシンプルな言葉で、祖父への思いが綴られている。
人が死ぬという事実は、その現象だけを見ればとてもシンプルだ。
この世に人間という生物として生まれ、生き、心臓が止まれば死ぬ。
残された人はもう二度とその人に会うことは出来ないという悲しみに暮れる。とてもシンプルな感情だ。これ以上シンプルな悲しみが、他にあるだろうか。それを歌うことに、余計な言葉は必要ないと、アヴリルが言っているかのように感じる。

祖父のことを書くことは、これでしばらくの間おしまいにしようと思う。
悲しみを言葉にする時期から、私も旅立たなければいけない。
でも、それでもどうしようもなく悲しくなったら、この歌を聞けば良い。