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それでも僕たちは恋をするーー「恋愛睡眠のすすめ」

恋愛睡眠のすすめ [DVD]
角川映画 (2010-10-20)
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恋ほど馬鹿馬鹿しくて愛しいものはない。恋をしている本人は真剣で必死なのに、傍から見るとその姿は実に滑稽で、もどかしくて、そしてどこか愛おしい。
そのことを、とても良く表している映画がある。ミシェル・ゴンドリー監督の「恋愛睡眠のすすめ」だ。

あらすじ(ぴあ映画生活より引用)
シャイなステファンは、隣人のステファニーに恋をする。だが当然のごとく告白などできない彼は、妄想が高じて彼女と付き合う夢を見るように。やがて夢と現実の区別がつかなくなり……。

この映画、現実の世界と主人公ステファン(ガエル・ガルシア・ベルナル)が見る夢とが交互に描かれる形で物語が進む。このステファンが一筋縄ではいかないシャイボーイなので、ステファニー(シャルロット・ゲンズブール)への思いが募るほどに行動がエスカレートしちゃって空気読めない変人と化していく。なのにどこか愛しくって滑稽で笑えちゃうのは、ファンタジックな夢の映像があるおかげなのか。その行動がいちいち突っ込みどころ&ユーモア満載でなんだか温かい気分になる。

特に笑ったのはステファニーに対して隣人であることを隠しているステファンが、彼女の家に行く時にわざわざ部屋を出てアパートメントの階段を下り、また戻ってくるところ。それをドア穴からステファニーに見られているとも知らずに。嗚呼、滑稽。なんて滑稽。そんな風に素直に思いを行動に移せないステファンは、もちろんステファニーの気持ちもよくわからなくって、片思い地獄にはまっていき、自分の夢という安全な場所に逃げ込むようになる。

ステファンほどではなくても、自分も片思いをしていると妄想に逃げ込む癖があるのでなんだか共感出来た。妄想の中では、私は片思いの相手と両思いになっているし、片思いの相手の苗字になっているし、片思いの相手と小さな白い部屋に住んで可愛い猫を二匹買っているのだ。嗚呼、滑稽。なんて滑稽。
だけどいずれはその「夢」から現実の世界へ戻らなければならない。それには辛さが伴う。「僕と70歳になったら結婚してくれる?」と泣きながらステファニーに言ったステファンの気持ちがわかりすぎて、胸が痛い。

それでも、こう思うのだ。夢の中ではいくら走ってもたどり着かない場所があるかもしれない。夢の結末は自分ではどうしようも出来ない。でも、現実は変えられるじゃないかと。この手で。変えられるじゃないかと。だから私たちは多分、恋をするんだ。相手の気持ちがわからなくってベッドの中で独り悶える夜があっても、私たちは恋をしてしまう。私はこの映画を見て、そう確信した。

この映画で描かれているのは、恋の不安ばかりじゃない。同時に恋の一番楽しい瞬間もたくさん描かれている。「森の船」という名のオブジェを二人で手作りしたり、「1秒タイムマシン」というへんてこな発明品で好きな人に抱きついてみたり、といった、甘酸っぱくてドキドキするようなシーンがある。ステファニーから頬にキスされた後のステファンの顔のうれしそうなこと! ステファンと一緒に恋をしているような気分になる。そしてその世界を取り巻く小道具の数々がさすがミシェル・ゴンドリー。どれもが手作り感に溢れていて不器用な恋のように愛おしい。

ラストはどう解釈するべきなのか。私はハッピーエンドと受け取ったけれど。
たとえこの映画のラストがバッドエンドだったとしても。それでも私たちはまた性懲りもなく、恋をするだろう。