それから

ちょいと読んでかない?

見知らぬ町と雪の降る音

とても、ご無沙汰しております。

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年末に新幹線で九州の実家に帰った。首都圏から九州に帰るのに、新幹線で行く、と言うと、「えっ、なんで飛行機に乗らないの? 時間かかるじゃん」と驚かれることが多いけれど、私は新幹線の窓から眺める見知らぬ町(「街」ではない)の景色がとても好きで、6時間新幹線に乗っていることなどまったく苦ではない。
普段、東京の周辺で生活していると、まるで日本には都会しかないような気がしてしまうけれど、新幹線に乗ると、窓の外には確かに静かな日本の町が存在していてほっとする。特段美しくもない田園風景が延々と続き、瓦屋根の低層住宅が子供の散らかしたレゴブロックみたいに建っている風景。不思議とどこの町にも人の姿は見えない。小さく暖かな部屋の中にみな引っ込んでしまっているのか。そしてそこに住む人々に、私は永遠に出会うことはない。私は彼らにとって、ただ物理的に通り過ぎるだけの物体なのだ。だけどなんだかそれは、どこか心地良い関係なのだ。

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新幹線から鈍行に乗り換えてまた窓の外を眺めていると、かすかに雪が降っていた。注意深く見ないと雨と見間違えてしまいそうな、弱々しい雪だった。その雪は、地元の駅に着く頃にはすっかり姿を消していた。

雪が静かに降る様子を「しんしんと」と、表現した人は、誰だか知らないけれどとても素敵な人に違いないと思っている。