「STRAWBERRY」曽我部恵一
ぼんやりと雲が青空を漂っている、日曜日の午後に聴きたい1枚。
曽我部さんがかつてサニーデイ・サービスというバンドに所属していたことは知っていても、サニーデイ・サービスのことをよく知らない私が曽我部さんについて書いていいのか一抹の不安を抱きつつも、このアルバムが大好きだから、このアルバムが大好きって感情だけでこの文章を書いている。
このアルバムは、学生時代にCDショップをぷらぷらしていて、ジャケットがなんだか気に入り、その場で試聴して購入を決めた1枚。その時は、曽我部恵一という人がサニーデイ・サービスに所属していた、ということも知らず、曽我部恵一という名前すら初めて耳にした、という状態だった。
それでも、試聴器から流れてきたギターの音と歌声に、私はすぐに魅せられた。
そしてこう思った。「このアルバムは信頼できる」。
信頼出来る、というのはもう感覚でしかないのだけれど、なんだろうなあ、「自分の好みにがっつりハマっている」というのとはちょっと違う。もちろん好みは好みなのだけれど、音楽においての好きと信頼はイコールで結べない気がする。大好きなアーティストでも、「このアルバムは本当に最後まで私を導いてくれるだろうか?」と不安になる人がいる。そうなんだ、曽我部さんの音楽はちゃんと最後に曽我部さんの世界観に私を連れて行ってくれる。その予感を、信頼と言わずして何と言おう。
このアルバムも、全部聴いたあとには心に心地よい風が吹いたような世界観を味わうことが出来た。そしてどこか、1曲1曲が素晴らしいスペシャルドラマのように、それぞれに物語を孕んでいる。
曽我部さんの歌には主人公がちゃんと居る。歌の中の主人公は、曽我部さんであって曽我部さんではない。役者に役が憑依するように、曽我部さんは歌で主人公を演じる。そうすると、その歌はキラキラと輝きを放って、私に喜びを与えてくれる。
そしてそこにはあざとさは全くなくて、音楽を奏でる楽しさに満ちている。私はそんなドラマの中に、いつまでも身を委ねていたいと思う。
まだまだ曽我部さんのCDでは聴けていないものがたくさんあるけれど、それでも曽我部さんは私の中で最も信頼出来るミュージシャンの1人です。
こういう風に音楽を愛することもあるんだなって教えてくれた、素敵な、大好きな1枚。