結婚の才能
結婚するには才能がいる、と最近強く思う。
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昨年の暮れ、付き合っていた恋人と別れた。理由は恋人に「結婚する気はない」と言われたから。薄々感づいてはいたけれど、言葉にしてはっきりと伝えられると流石に堪えた。堪えたことにより、自分は思っていた以上に彼と結婚がしたかったんだなと気づいた。
彼のことはちゃんと好きだった、と思う。私と違ってアクティブで、いろんな場所に連れて行ってくれたし、ネガティブな私に引きづられないでいつも安定したメンタルを保ってくれていた。私もそれに応えるために精神科できちんと治療を受けることを決めた。彼の前ではいつも笑っていられるよう努めた。喧嘩をしたこともない。お互い30歳を超えていて、正社員として働いている。
なのに、だめだった。じゃあ、彼にとって私とはなんだったのか?
頭の中でOfficial髭男dismの「Pretender」が流れた。やはりあの歌は素晴らしい。
正確に聞いたことはなかったが、恐らく年収は300万円台だったのではないかと感じた。
デート代は頑張っていつも少しだけ多めに出してくれていたけれど、都心のひとり暮らしで少し生活が苦しそうな様子は会話の端々から感じ取れた。
付き合ってもいないのに食事の度にみんなに全額奢ってくれる男友達と会う度、格差社会を考えずにいられなかった。
国税庁によれば、民間企業の会社員(パート含む)が2018年にもらった給料の平均値は440万7000円ということになっている(参考:民間給与実態統計調査(平成30年度))
www.nta.go.jp
日本の格差が広がってるのは高齢化のせい(ざっくりいうと年金だけで暮らす人とそうでない人が増加したことにより見かけの格差が広がった)と言われているけれど、そうとも言い切れず非正規雇用の拡大などによって若年層にも格差は広がっている。元恋人も有名大学を卒業しているにも関わらず卒業後数年はアルバイトだった模様。
所得格差の拡大は高齢化が原因か(参考:大和総研論文)
https://www.dir.co.jp/report/research/policy-analysis/human-society/20170601_012014.pdf
若年層が結婚しない(できない)原因のひとつとして「お金」があげられるのであれば、それを少しでも改善する社会の仕組み作りを政治家に望むばかりだ。
ただ、結局のところ、結婚するかしないかはあまりお金のあるなしには関係ない。よく言われるように、タイミングでしかないんだろうなと思っている。
年収300万円だろうが結婚する人はするし、1,000万円だろうがしない人はしない。
私の知人にも月収手取り17万円で結婚した男性がいる。結婚した時に借金があったという人も知っている。
要は、覚悟を持って二人で共闘できれば問題はないのである。
冒頭で結婚するには才能がいる、と言ったけれど、その覚悟を持つこと=才能なんではないだろうか。
その才能を発揮したタイミングでそばにいた人と人は結婚する。
でも、私には三十数年生きてきた学んだ唯一の確信とも呼べる持論がある。
それは、人の気持ちを変えることはできないということ。
元恋人の心を結婚へと仕向けることはきっと私には出来ないとわかっていた。それは彼を本気で愛していることとは別の次元の話だ。
「Pretender」風に言うなら、別の世界線でなければ有り得ない。
だけどきっと彼もいつか誰かと結婚するだろう。
それはもしかしたら二年後かもしれないし、もっと早く半年後なんてこともあり得る。人間なんてそんなもんだ。
私だって半年後には結婚しているかもしれない。
だから人生って面白い。今はただ、そう思う。